スポーツ傷害の治療への新しい道:細胞治療
細胞治療は、幹細胞を使用して損傷した組織を再生することを含む治療で、現在の外傷学においてはスポーツ傷害の治療に使用されています。
最初は細胞治療を軟骨の治療に使用しました。破裂または損傷した領域に幹細胞を注入すると、 これらの細胞は、新しい健康な軟骨細胞(軟骨細胞)を作ります。この治療は予想以上の効果をあげているため、実力のあるプロスポーツ選手の中には、すでにこの治療法を行う許可を得ている人もいます。
ただし、細胞治療はまだ、実験段階と応用段階の間にある宙吊りのような状態であり、多くの国では規制機関による事前の承認が必要であったり、事前に承認を受けた病院でのみ治療が実施される必要があります。
このような状況にも関わらず、スポーツ医学において専門家たちは細胞治療はスポーツ医学の未来だと考えているため、プロだけでなくアマチュアのスポーツ選手など幅広くこの治療法が受けられるようになるまでに、さほど長い時間はかからないでしょう。
スポーツ傷害の治療に細胞治療を取り入れる利点とは?
幹細胞を用いた細胞療法は、他の治療法と比較して顕著な利点があります。具体的にいうと、従来の外科的な処置では、外科医が「患者の身体に入る」ためには体組織を切開する必要があります。しかし細胞治療においては、多くの場合、これは当てはまりません。
幹細胞は体内の炎症を調節することもできます。幹細胞が損傷した組織に移植されると、欠けている組織を置き換えるだけでなく、炎症を抑える効果があると言われています。この効果により、多くの場合、数年は続くと考えられている怪我によるダメージが軽減される効果が期待できます。
炎症を制御するこの働きは、細胞治療が免疫療法の一つであることを意味します。炎症によって起こる体液と細胞の蓄積を抑制することで新しい細胞が現れ、怪我による瘢痕の代わりに新しい組織が形成されます。
幹細胞療法の別の利点は、血管の流れを増加させることです。これらの細胞は、新しい動脈と静脈の接続が形成されるのを刺激して促進することで、血液循環を回復させ、痛みを軽減します。
細胞治療が効果を発揮する可能性がある損傷
長期的にみると、細胞治療の用途は無限であるように感じられますが、当面の間は、スポーツが原因で起きた怪我の一部は、幹細胞の利点を使った良い治療効果が現れていることに焦点を当てましょう。
細胞治療は、骨や筋肉の損傷の治療においてすでに時代を先導しており、テニス肘と呼ばれる上腕骨外側上顆炎の治療においては、再生医療がすでに十分に確立されているようです。
専門家は、回旋筋腱板と膝、特に前十字靭帯が裂けた場合の修復に細胞治療を使う治験を実施しました。幹細胞はまた、深刻なアキレス腱の損傷の治療に非常に効果的である可能性が明らかになりました。
これまで、これらのスポーツ傷害の治療はすべて、手術が行われていました。外科医は損傷にメスを入れ、修復するために組織を開かなければいけませんでしたが、手術には特定のリスクを伴います。例えば、傷が予定通りに正しく治癒せず、瘢痕組織が多く進行した場合、スポーツ選手は二度と競技ができなくなるリスクがありました。
しかしながら、細胞治療においては、回復が不十分である状態は避けることができると考えられているため、術後の後遺症を最小限に抑えて、スポーツに短期間で戻る可能性が高くなるでしょう。
治療におけるアジュバントの使用
現在の幹細胞を用いた細胞治療では、他のアジュバントの使用も行われます。これらは、再生プロセスを補完し、最終結果を改善する物質です。
アジュバントの問題は、さまざまなスポーツ機関の多くがドーピングとして見なしていることです。この 典型的な例の一つが、血小板製剤の使用であり、これは多くのプロスポーツで禁止されています。細胞治療では、患者から血小板を抽出し、幹細胞の隣に配置します。これは、瘢痕化プロセスをスピードアップし、新しい細胞を作るための栄養素を提供します。
幅広くつかわれているもう一つアジュバントは、生物学的サポートと足場と呼ばれるスキャフォールドです。これらは、幹細胞のガイドとなるハイドロキシアパタイトやフィブリンなどの物質を指します。
細胞治療の未来
再生細胞療法の研究は常に進歩しており、これがスポーツ外傷への一般的な治療の選択肢となる日は遠くないでしょう。
この治療法とその長期的な効果については、まだ研究すべき点や課題が多く残っていますが、その効果は高いと考えられています。そして、細胞治療が幅広く使われるために、世界中の国において法律や規定が改正される必要がありますが、プロスポーツ選手の中にはすでにこの治療を取り入れているもいるため、アマチュアのスポーツ選手が利用できるようになるのはまもなくでしょう。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Hernández-Hernández, Alicia, et al. La medicina regenerativa y sus vínculos con la medicina del deporte. Revista Cubana de Hematología, Inmunología y Hemoterapia 29.2 (2013).
- Rienzi, Alfredo, Andrew Miller, and Ignacio Cuevas. Plasma rico en plaquetas. Indicaciones en lesiones deportivas. Tendencias en Medicina 48 (2016): 145-51.
- Piloto Tomé, Kenia M., et al. Lisado plaquetario autólogo en el tratamiento de la epicondilitis. Revista Cubana de Hematología, Inmunología y Hemoterapia 32.2 (2016): 282-284.
このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。